これはクリスマスカードと一緒に書いたSSです。
今まで「マンガを描く時にちょっと話の内容を文章に変換して・・・」
程度でしか文章は書いた事がないのであまり大した物ではないです。
おヒマ潰しにでもどうぞ・・・

晃の誕生日  

 * 24日クリスマスイヴ前日 *
 クリスマスに向けて科学庁内部にもツリーの他様々な飾り付けがされている。
  いつもリアクター管理に追い回され、ピリピリと張り詰めていた研究員達の間にも
 既に和やかなムードが流れていた。
 ただ、御剣晃だけは例外だった。
  モニターに写るリアクターを見ては思いつめた表情をし、研究室に篭っていたが
 人望が厚いだけに部下達は心配していて、すぐにそれは恭太郎の耳にも入ることとなった。

 「晃が研究室に篭っている?それはいつもの事だろう」 
 「あ・・・でっですが明日は御本人の誕生日でもあるワケですし・・・
  出来れば長官の方からなんとか言って頂けたらと思いまし」
 「分かった わかった、言っておくからもう下がれ」
 「あ、はい、お願いします」
 いかにも面倒臭いといった感じで言葉を区切られるも
 一礼して執務室を出て行く部下を見送りながら 恭太郎は深い溜め息をつく
 「あの何を考えているのか解らんヤツが、何故あんなに人望が厚いのか・・・」
 そうつぶやいて、ふっとリアクターを眺めている時の晃の表情を脳裏に浮かべる
 『・・・・・・・・・母親、を見ていたのか・・・?
   フフッ、まさかな、アイツに限ってそんなことがある訳――――――――――』
 執務室の中はただ静かな空気だけが流れている

 * 24日クリスマスイヴ・朝 *  
 研究員の誰かがディスクを持って来たのか、化学庁の中は朝早くから大音量で
 ジングルベルのメロディが流れている。
 その音は晃の研究室にもわずかに流れ込んでいた。
 曲に混じってスースーと息遣いが聞こえる、
 昨日の夜研究室に入ってそのまま寝てしまったらしい、デスクにうつ伏せになって
  寝息を立てている、が、あまり気持ち良さそうではなく
 時々眉間にシワを寄せている。
 『・・・ウルサイな・・何だこの曲は?』
 「今日はクリスマスイヴなんだよ、そして、僕と君の誕生日でもある。」
 『クリスマス? 誕生日?』
 「そうだよ、忘れたかい? 毎年母さんがケーキを作ってくれていただろう、
   父さん茂叔父さん、それに・・・弘樹、みんなでお祝いしてくれてた、
   クリスマスよりも僕たちの誕生日を優先してくれてたよね、プレゼントも貰って・・・
   あ、ほらッ、あの時弘樹はまだ5歳だったのに大事にしてたサンタの帽子をくれたんだ! 
   母さんはそれにセットでサンタの服を作ってくれた。
   着て外歩いたけどちょっとだけハズかしかったよね、でもスゴく嬉しかった。」
 『・・・・・・・そうか・・・』
 「君は、嬉しくなかった?」
 『――――――・・・僕は』

 ピー――――――――――――!
 内線のコール音が突然鳴り響き飛び起きる。
 『ただのコール音か・・・』
 目が覚めたことに内心安堵している自分に気付き苛立たしさを覚える晃、
  乱暴に内線ボタンを押す。
 「なんだ?」
 《長官がお呼びです、『執務室に来い』だそうです》
 「用件は?」
 《あ、イエ・・》
 「そうか、分かったすぐ行くよ」
  内線を切って研究室を出て行き、執務室のドアをノックする、返事がない、
 『?』
 もう一度ノックするがやはり返事はない
 『出て行ったのか?』
 中に入るが恭太郎は見当たらないので、出て行こうとするが
 デスクの上に置かれたメモに気付き手に取る。
 それには短くこう書かれていた。
 “少し席を外すので済まないが引き出しの整理を頼まれてくれ”
 メモにはテープでデスクの引き出しの鍵が付けられている。
  「・・・掃除させる為に呼びつけたのか??」
 『だいたいこの鍵は、学生から盗った書類が入ってる引き出しの―――』
   ガタタ・・・
 「・・・・・・・・・・・ッ!」
 引き出しの中に書類やディスクは一つもなく、代わりにラッピングされた箱が入っており
  カードが添えられていた。
 見ると“HAPPY BIRTHDAY〜晃〜”と書かれていた。
 嬉しくない
 かなり驚いたがとっさにも嬉しいとは思えなかった。
 こんな面倒なことをするくらいなら他にも何かする事があるハズだ、けど
 声が出てこない。
 
 どれくらい時間が経ったか分からないが、晃は箱を開けるでもなくただ見ていた、
 中が気になる訳ではない、手が出せないのだ。
 戸惑いの表情を浮かべ、デスクの前で立ち尽くしていると、ガチャっとドアを開ける音がする。
 顔を上げると恭太郎が箱を抱えて凄い形相で立っている。
 「だっ、晃!!?」
 どうやら恭太郎の予定では晃はとうに部屋を出て行っていたようだ。
 だが晃はまだ部屋にいたので、驚きのあまり抱えていた箱を落とすと
 中から白いボアの付いた真っ赤な布、赤いボール、それに角(?)のような物が転がり出た。
 恭太郎は今までにないくらいの慌てぶりでドアを閉めると、急いでそれを箱の中に押し込んだ。
 晃は眉をひそめ、箱を手に持って恭太郎に歩み寄る
 「一体何をしていたんですか? それにコレは?」
 「ななっ何もなにも、見れば分かる誕生日プレゼントじゃないかッ」
 「では抱えているその箱は?」
 「こっこれは・・・お前には、関係のないものだ!」
 箱に手を置く晃
 「見せてもらいますよ」
 「う・・・・・ッ」

 中に入っていた紅い布を手に取り広げる
 「・・・・・・・・・・・・・・・ッ」
 「単なるサンタとトナカイの衣装だ! クリスマスパーティーに使うものだから
  お前には関係ないだろう、毎年参加していなかったし・・・」
 「・・・長官が着るんですか?」
 「ん あ、ああ、サンタの衣装をな、トナカイは他のヤツが・・・」
 「・・・・・・・・・・・・・・・・」
 『何なんだ晃は?? 黙り込んで?』
 「今年は・・・トナカイで我慢してください。」
 「なに?  ぶッッ!??」
 突然鼻に丸いものを押し付けられる、例の赤いボール、トナカイのハナだったようだ。
 驚いていると、続いて頭に衝撃が走る
 「ぐわっ!」
 「ふむ、長官にはそっちの方が似合うんじゃないですか?」
 そう言い残して衣装を持った晃は執務室を出て行く。
 「あ、アキラァー―――!?」

                  チャンチャン♪

誰よりも人間らしいのでは? と感じられた晃(タナトス)だからこそ
書く事が出来た話なんですけどね、
私としては桐生院家で竜神として奉られてた時はきっと無かっただろうと思うけど
自分が一種“恐れ”の対象であることを知った時やっぱり「生きている」ってことを
実感しちゃったンじゃないかなァ〜なんて、
それに弘一兄さんと一緒にいるのなんかたまらなかったんじゃないでしょうかね?
家族の笑顔はいつもこちらを向いてるけど、それは決して自分に向けられてるモノではないって
解っちゃってたでしょうからねェ、
捨てられた子猫が一番妥当な表現かも?
おなか空いてたよね、アキラさん・・・

・・・ハァ、やっぱり文章は難しいや(^^ι)